共生者 最終章 会社を私物化する輩(やから)達
1 招かれざる客
ちょうど1年前、私は私の著作の熱心な読者だということでひとりの老人の訪問を受けた 読者と称する人からの訪問は決して珍しいことではない いつものように私はその人物の訪問をあっさりと受け入れたのだった
その人物は小関と名乗っていた 投資家かな 小奇麗な老紳士であるその人物はいきなり西田春夫氏の思い出を語り始めた 私は著作共生者の中で彼を取り上げているので不思議はなかったが私の記憶している限り小関という人物はいっこうに記憶上思い当たらなかった それがかえって好奇心を掻きたて私は彼の話に熱心に耳を傾けたのであった そこには彼の私の知らない公務員時代の話やエピソードがちりばめられておりある意味新鮮な出会いなのであった
西田氏の人となり思いでなりを振り返っているとあっという間に時間が過ぎ、その日は次回の約束をして笑顔で別れたのだった
それから数週間が経ち老紳士と再会すると彼は今度は相談事を持ちかけてきたのであった
それは自分が大株主である上場企業に関する相談であった 「バナーズ」私はその会社の名前を聞き「なんじゃそりゃ」と失礼ながらはっきりとその老紳士に伝えたのであった
個の業界に精通している私でするら聞きなれないその社名に老紳士は昔は埼玉繊維という名前だと語った 「埼玉繊維?」私の遠い記憶が微かであったが蘇ってくる
西田氏の晩年、まだPSI証券が廃業する前一時相場になって騒がれていた銘柄、でも彼はメインで語ることなく・・・・・ そんな記憶がフラッシュバックのように蘇り、埼玉銀行と近くボロ会社だが資産がある会社と誰かが語ったのをも思い出したのだった
「でもあれは畑崎氏や箱根筋ではなかったか?」ということはこの眼の前の老紳士は箱根筋のメンバー?等々 私の頭の中はにわかに高速回転で動き始めていたのであった
2 強引な相談
その後老紳士はこの埼玉繊維について事細かに私に説明しはじめた なぜこの会社に目を付けたのか おおよそ西田氏がその当時関係者に話していた内容と一致する 経営悪化していた埼玉銀行の関係でボロ会社であるけれど資産価値はある
株価が安いので魅力もあった 等々であった しかしこの会社は結局西田氏は手を付けることは無く目の前にいる老紳士が関係者同士で買い上げてしまったということ、仕方が無いので社名も松佳と代えて投資会社に変貌させて保有したということであったのだ そのせいか西田氏からこの会社の名前をその後聞くことは全くといって無かったからである
それからは地道に会社を助けて現在に至るということであるが実は最近困ったことがあるというのだ
それは私も著作で書いた反社会勢力の連中が会社を脅迫しているという事実である
私はすぐさま警察にというと老紳士は既に届け出ていて証拠も押さえているということであった それならということでその場は終わったが、今思えばそれは巧妙に私の正義感を刺激するように仕掛けられた大きな企みの助走にしか過ぎなかったのだ
老紳士はバナーズの業績、そして上場維持の問題さらに何よりも株価が2円3円という存続している上場企業としては信じられない値段の相談なのであった
この会社を再生したので是非私の力を貸してほしいと相談され私も自分の本業でもあるのでこれもまた単純に仕事を受け入れてしまったのであった
時価総額、事業再生を同時にか解消するにはマーケットからのファイナンス(資本調達)が常套手段である その点は明らかに一致、その引受を一部手伝ってほしいとの申し入れなのであった
私はざっくりと財務諸表は見ていたのでこの会社の自分なりの再生プランの青写真は描けていた であるから自信もってその依頼を受け入れたのであった
3 仕手筋の片鱗
12月も押し迫った頃小関氏は私を訪ねいよいよ具体的なファイナンスの計画を話してきた 大筋は彼らが既に決めていたことで東証とも確認は取れている旨を伝えられ引き受けの一部に加わらないかということであった そして私は懇意にしている海外の投資家に声を方がファイナンス発表の時期と投資家の準備が会わずとりあえず発表時に名前をそれることは見送りとなった
その代わり彼らは一部を自分たちのグループから譲渡させるからということで私は継続的に協力することとなった
その間いろいろな情報が私に集まってきた バナーズがその後一連の株を投資し企業業績が悪化していたこと、同社の実質的オーナーは箱根筋の小林という人間で兜町ではかなり評判が悪いということ、私がかかわるなら十分注意するように等々いろいろな助言をいただいたのである
しかし同じ反社会勢力に脅かされ私のところを尋ねてきたという妙な連帯感から、私がこの会社を再生することは自分の著作、証券マンとしての活動の金字塔になるのではないかという使命感みたいなものが影響し、慎重に対処するいつもの姿勢が若干かけていたのも事実なのである
小関氏は何回か面談するうちに自然と本名小林を名乗ることとなり会話もいつかしら小林で進むようになった
あるとき彼は私にファイナンス後の計画を持ちかけてきた 今の時価で株式を発行すると、発行後総数は4億株になり非常に重くなる したがって同社を株式併合し発行済みを少なくしそこのタイミングを狙って吊り上げないかという話であった
私は、その旧態依然とした仕手筋の発想、もしくは直近での千年の杜のパターンであるスキームには否定的であったので小林氏に、そのような時代錯誤的な手法はやめるべきだとい丁寧に諭したのであった
発行済み株式総数を変更してもそれは心理的なまやかしにしか過ぎず実態は何も変わらない むしろマネ―ゲームを助長するだけで、多数の個人投資家を裏切ることとなりその結果は何も生まれない それよりも同社の業績好転の裏づけや、それによる誰もが納得する一般個人投資家の支持無くしては高株価は実現してはならないと 私は自分の持論を1時間ぐらい小林氏に伝えたのだった
その結果、彼は、その場は納得をしてくれて、それならば本格的に会社の建て直しを手伝ってくれということになり、私もわかってくれたことに感謝をし、その提案を快諾することとなったのである
12月24日バナーズのファイナンスは予定通り発表され私にとっても自分の仕事の集大成となるべきイベントをスタートさせることとなった
今おもえば、あの時のそれは、ある意味私に与えられた最悪のクリスマスプレゼントだったとでもいうべき出来事なのでもあった
4 苦難の道程
新株予約権を上手く使って資金調達をして欲しい あわせて会社の業績の再生を手伝って欲しい 実際、この依頼はかなり難航した 私は懇意にしている投資家、信頼している投資家に助言を求めた しかし株価の2円という絶対的な金額や、過去のバナーズの歩んできた問題点、そして箱根筋小林氏の風評と資金調達を阻む問題は山済みで、市場の環境も完全にアゲンストであった
業績を上げるためまた企業再生するために私は銀行の借入金に代わる資金調達・返済スキームを考案した この手法はファイナンスの世界では画期的で、今まで誰も実行したことが無く、バナーズがかかえる諸問題を一気に解決できるものと自負していたが、意外にも会社側はそのプランに理解を示さなかった
むしろ彼らは株式を上げるために効果的な投資家を私が連れて来ることのみを期待していたようで、私の周りの賢明な投資家は当然そのようなリスクの高い投資に応じるわけが無く、投資家も私が自ら描いたスキームが採用される保証があって初めて私を応援し前向きに検討するというものであった
したがってそのようないたちごっこが続きながらも、私は合計4人もの投資家を紹介したが、結局バナーズ側、ならびに小林氏はその提案を受け入れず(彼らの何か急ぐスケジュールの都合からか)ある時期をもって私との交渉を打ち切ってきたのであった
したがって私が提案した事業プランならびにファイナンススキームは結局日の目を浴びることなく没となり、私はこの作業にかかわった数ヶ月は私自身結局なんの報酬も得ることなく徒労に終わり、公式に相談役就任予定を退くこととなった
その間、起きたことは私の相談役就任リリースとほとんど同時期に図ったように仕組まれたバナーズの恐喝事件の逮捕劇、後日私は市場の関係者から松本が仕掛けたのといろいろ尋ねられるが私にとっても実際寝耳に水のような話であり、いささかその影響力には困ってしまったものなのであった
また私は社長はじめ正式に会社側との接触を求めたが、小林氏側の抵抗によって一度もそのような機会すら与えられることなく終わったのである
このような事を後から冷静になって振り返れば、私は窮地に追い込まれた彼らの広告塔として利用され、彼らの予定通り株価を吊り上げるだけの投資家を私から期待出来ないと見るやいなや(おそらく他にそのような投資家が見つかったのであろう)理想に燃えている松本はかえって邪魔なので退いてくれということでこのようになったのであろうと推測される
5 挫折と展望
私が相談役を降りた直後、またもや数字のまやかしともいえる準備金の取り崩しによる見せ掛けのバランスシートの改善策(従来仕手筋が駆使してきたまやかしの常套手段)が行われており、それをみて私は計り知れない悲しさと寂しさに苛まれるようになった
今思えば事業家でもない一株主によって支配され、彼に都合のよい経営などしたことの無い傀儡のスタッフが送りこまれたそんなボロ会社を、理想に燃えてまともに再生しようと考えていた私の方が間違っていたのかもしれない
しかし、私は言いたい
上場会社はそれが上場という公的な場にある以上、一部の誰かの利害を代表するものであっては決してならない
そして会社の社員もその大多数を代表する株主も、その会社が社会に対し、広く認められ必要とされるべき存在にしなくてはならないことを深く認識しそうなるように実行すべきなのである
私の実務家としての長い経験上、いつもそのような意識や知識をもたない社会人と出くわし、自分の力ではどうしようにもならないこれらの現実にいつも落胆するのである
だからこそ私はジャーナリストとして、実務との利害関係を超えてでも、このような不条理に対して声を大にして正論を言い続けようと思うのである
バナーズのこの一件をさらすことは私にとっても決して愉快なことではない
しかし昨今当局が積極的にここ数年の証券業界の不始末を一掃し糾弾しようとしているのであるならば、私も声を上げて支持しなければなるまい
次回からは先日逮捕されたオメガプロジェクト元社長の横浜氏周辺の事件と、このバナーズとの奇妙なつながりについて解説して行こうと思うのである
6 仕手の遺言
最初に、今から述べる2007年当時の出来事は、私が病気が原因で業界の第一線を引いていた時期の事でもあり、今までの私の著作のような直接の実体験に基づいたものではない
しかしながら、これらは私がバナーズの相談役になるに際して小林氏から直接聞いたことや、またその後その周辺の信頼すべき関係者数人から聞いた話をもとに構成しているので大筋真実と異なるものではないであろうと認識している
バナーズは2007年10月29日払い込みで第三者払い込み増資5000万株1株34円で17億円の資金調達を行っている 引き受け会社はインベストメントサイゴンでありベトナム投資を行っているという振れ込みの不透明な会社、その代表は今回ユニオンホールディングで横浜氏とともに逮捕されたジェイ投資事業組合の桑名利夫氏とされている
今回恐喝で逮捕された本多氏、前野氏、鈴木氏はそれぞれこのインベストメントサイゴンに資金を貸し付けた神商やワシントンの代理人として資金回収を強要し金を取ったこととが理由で更に警察当局もそれらの資金の裏づけに反社会勢力が関与しているのではないかという理由で動いた形跡もある
私は当初小林氏からは、会社に彼らが乗り込んできて恐喝をし、その時のテープ等の一連の証拠もあると説明をされ、資本市場からそのような行為を追放すべきだという私の主張や善意を巧みに利用し私に同調するように促してきた
そして私の相談役就任予定というリリースとほとんど同時期にこの逮捕劇が報じられ世間的にはあたかも私が手を貸し逮捕劇が進行したかのような思惑をも市場に与える結果となったのであった
私にとってはそれはいささか迷惑な話で、私の周辺の仲間も心配して私にいくつかの情報を与えてくれたのであった
しかしその後の詳しい経緯を私が知るにあたって実はこの問題はそれほど単純な事ではないということを気づき始めるのである
今思えば以前なぜこのようなトラブルが起きたのかという質問をバナーズ関係者に尋ねたところ、私は意外な事実を耳にするのである
彼らは投資家はこのファイナンスによって利益を得ようとした そして当時横浜氏を中心の旗振りとして株価のつり上げを図ろうとしたのであると しかし私は不思議に思った 横浜氏はオメガやユニオンの会社経営者であっても仕手筋というイメージはない 彼らにそんな力や野望があったのであろうかと
しかしバナーズ側は彼らが巧妙にファイナンスを仕組み、株価の演出を横浜氏中心でしたのだと私には力説し続けたのである
後に私の友人のジャーナリストや、この出来事を詳しく知る関係者が私に忠告してきたことは
「松本、真実は全く逆だよ 小林氏が彼らに元本を保証して金を出させたんだ 34円の株を数ヵ月後に40円で返すという約束でさ」
「それは投資ではないということですか」
「そう あれは単なる金銭消費貸借契約(金消)で小林氏と神商やワシントンとの間には契約書も存在しているらしいよ」と
私はそのことを知らされてからこのバナーズ側の言い分にはとてつもない不信感を持たずにいられなくなった
私は恐喝や脅しという行為は絶対にこの日本の資本市場から追放すべきだという信念にはかわりは無い
そして公正な株式市場を作り上げることは私の永遠の持論であり私の活動ではあることもかわりがない
しかしこのトラブル・事件は、我々が聖域としている資本市場にまたひとつ不当な影を落としこんでいるのである
投資資金を有しない架空の引き受け先、投資ではなく金消でまかれた投資契約、マネーゲームのためだけの資金調達とそれにむらがるボロ株会社の株主と経営者、それぞれの一連の出来事に今の全ての資本市場が抱えている問題点が浮き彫りに映し出されているのである
私がその事実を認識し始めた頃、それを見透かしたかのようにバナーズ側ももう私には用が無いとでも言うばかりな態度に露骨に出てきた
時は2009年春、私は自分の懇意にしている投資家からバナーズへの投資の同意が得られないまま、またバナーズ側からも私からの事業再生提案が全く相手にされないまま暗黙の了解の下で相談役の就任を降りることとなる
そしてそこに最後残ったのは、またもや私の前向きな情熱が裏切られた末の徒労と、人の信念をまたしても悪用し利用しようとするこの業界の輩たちにたいする嘆きもしくは不振感そのものだけであったのである
7 問題の所在
おそらく2007年あの当時は西田氏が現場の一線から去り相場の演出家が不在の中、故高橋治則氏の側近でもあり後継者でもあった横浜氏が何人かの投機家達からの絶大なる信頼を受けて仕手筋の代行をしていたのではないかと想像される
いつの時代も投資家には市場を演出するヒーローを嘱望する しかしマーケットのルールが不正だらけで秩序や倫理が乱れている環境では、そこに大きな不正や犯罪が生まれやすくなるのは当然なのである
その当時はライブドアの堀江なる勘違い野郎が市場を席巻し、投資家たちもその戦略家たちの口車に乗せられ積極的に投資してきた時代である
投資ファンド、カリスマ経営者という言葉に笑いが止まらないくらいに金が集まり一部ファンドを使っては投機的なマネーバブルが起きていた時代でもあった
今、当局が押さえている案件はみなその当時のものである 共通していることは主人公がみな上場会社の経営者で会社を牛耳る立場にいるものであること、不適切な資金調達を容易に行える立場にいたということなどである
堀江が世間を騒がせていた頃、東リホールディングの福村氏もジェイブリッジもそしてユニオン横浜氏もみな一世を風靡していた 市場は彼らの演出に踊らされ何もしらない個人投資家は多大な損害をそれらから受けることとなった
彼らが犯した罪、それは上場会社経営者という公人としての責任、あくまで一般株主から会社の経営を委託されその責任を全うしなければいけないはずの立場である経営者が自らその義務を放棄し仕手筋そのもののようなマネーゲームに興じる姿こそが、資本市場に対する冒涜であり多くの投資家への裏切り行為なのであるということなのである
私が聞いた話は大阪の髙木証券ではバナーズのファイナンスの情報が事前に漏れて何人かの投資家はその策略で踊らされたという
そして34円の増資の発表後、株価を吊り上げる工作を持ちかけられ多くの被害者が出たという
私が聞いたのはこの証券会社の営業マンは横浜氏との繋がりがある人物とされており、小林氏の証言からも横浜氏が自分の手の内であるユニオンのファイナンスを利用してバナーズの株の吊り上げ演出をしている可能性は十分推測できるということである
私は思う 自分が自由に金を調達し運用する力を、公人としての上場会社経営者が持ち始めたら、市場の秩序をこの上なく乱れるであろう
上場会社は不特定多数の株主のもの 大株主はあくまでその代表者でしか過ぎない
その彼らが会社を牛耳り会社の金を流用し私物化することは絶対に許されてはいけないことなのである
それは言い換えればバナーズの大株主小林氏にも言える 大株主の立場を利用して会社を牛耳り経営を思うように支配するこういは横浜氏らとなんら代わらない 問題は彼らが私利私欲で行動するのではなく会社の代表として会社を立派に再生させる苦労や努力を怠っていることなのである 彼らは自らの過ちを反省することは無くむしろ強権的に他人のせいにして立ち去る
今の未熟な新興市場ではそのようなことをはっきりと認識している経営者がいかに少ないことか 今回の当局の捜査、資本市場を食い尽くすハイエナ狩りは、徹底的にそれらの根底にある問題を総括し改善して欲しいものである
そして一日も早く多くの個人株主たちに信頼される市場、公正なルールの下に運用される市場の実現を目指して組み直して欲しいものなのである
ちょうど1年前、私は私の著作の熱心な読者だということでひとりの老人の訪問を受けた 読者と称する人からの訪問は決して珍しいことではない いつものように私はその人物の訪問をあっさりと受け入れたのだった
その人物は小関と名乗っていた 投資家かな 小奇麗な老紳士であるその人物はいきなり西田春夫氏の思い出を語り始めた 私は著作共生者の中で彼を取り上げているので不思議はなかったが私の記憶している限り小関という人物はいっこうに記憶上思い当たらなかった それがかえって好奇心を掻きたて私は彼の話に熱心に耳を傾けたのであった そこには彼の私の知らない公務員時代の話やエピソードがちりばめられておりある意味新鮮な出会いなのであった
西田氏の人となり思いでなりを振り返っているとあっという間に時間が過ぎ、その日は次回の約束をして笑顔で別れたのだった
それから数週間が経ち老紳士と再会すると彼は今度は相談事を持ちかけてきたのであった
それは自分が大株主である上場企業に関する相談であった 「バナーズ」私はその会社の名前を聞き「なんじゃそりゃ」と失礼ながらはっきりとその老紳士に伝えたのであった
個の業界に精通している私でするら聞きなれないその社名に老紳士は昔は埼玉繊維という名前だと語った 「埼玉繊維?」私の遠い記憶が微かであったが蘇ってくる
西田氏の晩年、まだPSI証券が廃業する前一時相場になって騒がれていた銘柄、でも彼はメインで語ることなく・・・・・ そんな記憶がフラッシュバックのように蘇り、埼玉銀行と近くボロ会社だが資産がある会社と誰かが語ったのをも思い出したのだった
「でもあれは畑崎氏や箱根筋ではなかったか?」ということはこの眼の前の老紳士は箱根筋のメンバー?等々 私の頭の中はにわかに高速回転で動き始めていたのであった
2 強引な相談
その後老紳士はこの埼玉繊維について事細かに私に説明しはじめた なぜこの会社に目を付けたのか おおよそ西田氏がその当時関係者に話していた内容と一致する 経営悪化していた埼玉銀行の関係でボロ会社であるけれど資産価値はある
株価が安いので魅力もあった 等々であった しかしこの会社は結局西田氏は手を付けることは無く目の前にいる老紳士が関係者同士で買い上げてしまったということ、仕方が無いので社名も松佳と代えて投資会社に変貌させて保有したということであったのだ そのせいか西田氏からこの会社の名前をその後聞くことは全くといって無かったからである
それからは地道に会社を助けて現在に至るということであるが実は最近困ったことがあるというのだ
それは私も著作で書いた反社会勢力の連中が会社を脅迫しているという事実である
私はすぐさま警察にというと老紳士は既に届け出ていて証拠も押さえているということであった それならということでその場は終わったが、今思えばそれは巧妙に私の正義感を刺激するように仕掛けられた大きな企みの助走にしか過ぎなかったのだ
老紳士はバナーズの業績、そして上場維持の問題さらに何よりも株価が2円3円という存続している上場企業としては信じられない値段の相談なのであった
この会社を再生したので是非私の力を貸してほしいと相談され私も自分の本業でもあるのでこれもまた単純に仕事を受け入れてしまったのであった
時価総額、事業再生を同時にか解消するにはマーケットからのファイナンス(資本調達)が常套手段である その点は明らかに一致、その引受を一部手伝ってほしいとの申し入れなのであった
私はざっくりと財務諸表は見ていたのでこの会社の自分なりの再生プランの青写真は描けていた であるから自信もってその依頼を受け入れたのであった
3 仕手筋の片鱗
12月も押し迫った頃小関氏は私を訪ねいよいよ具体的なファイナンスの計画を話してきた 大筋は彼らが既に決めていたことで東証とも確認は取れている旨を伝えられ引き受けの一部に加わらないかということであった そして私は懇意にしている海外の投資家に声を方がファイナンス発表の時期と投資家の準備が会わずとりあえず発表時に名前をそれることは見送りとなった
その代わり彼らは一部を自分たちのグループから譲渡させるからということで私は継続的に協力することとなった
その間いろいろな情報が私に集まってきた バナーズがその後一連の株を投資し企業業績が悪化していたこと、同社の実質的オーナーは箱根筋の小林という人間で兜町ではかなり評判が悪いということ、私がかかわるなら十分注意するように等々いろいろな助言をいただいたのである
しかし同じ反社会勢力に脅かされ私のところを尋ねてきたという妙な連帯感から、私がこの会社を再生することは自分の著作、証券マンとしての活動の金字塔になるのではないかという使命感みたいなものが影響し、慎重に対処するいつもの姿勢が若干かけていたのも事実なのである
小関氏は何回か面談するうちに自然と本名小林を名乗ることとなり会話もいつかしら小林で進むようになった
あるとき彼は私にファイナンス後の計画を持ちかけてきた 今の時価で株式を発行すると、発行後総数は4億株になり非常に重くなる したがって同社を株式併合し発行済みを少なくしそこのタイミングを狙って吊り上げないかという話であった
私は、その旧態依然とした仕手筋の発想、もしくは直近での千年の杜のパターンであるスキームには否定的であったので小林氏に、そのような時代錯誤的な手法はやめるべきだとい丁寧に諭したのであった
発行済み株式総数を変更してもそれは心理的なまやかしにしか過ぎず実態は何も変わらない むしろマネ―ゲームを助長するだけで、多数の個人投資家を裏切ることとなりその結果は何も生まれない それよりも同社の業績好転の裏づけや、それによる誰もが納得する一般個人投資家の支持無くしては高株価は実現してはならないと 私は自分の持論を1時間ぐらい小林氏に伝えたのだった
その結果、彼は、その場は納得をしてくれて、それならば本格的に会社の建て直しを手伝ってくれということになり、私もわかってくれたことに感謝をし、その提案を快諾することとなったのである
12月24日バナーズのファイナンスは予定通り発表され私にとっても自分の仕事の集大成となるべきイベントをスタートさせることとなった
今おもえば、あの時のそれは、ある意味私に与えられた最悪のクリスマスプレゼントだったとでもいうべき出来事なのでもあった
4 苦難の道程
新株予約権を上手く使って資金調達をして欲しい あわせて会社の業績の再生を手伝って欲しい 実際、この依頼はかなり難航した 私は懇意にしている投資家、信頼している投資家に助言を求めた しかし株価の2円という絶対的な金額や、過去のバナーズの歩んできた問題点、そして箱根筋小林氏の風評と資金調達を阻む問題は山済みで、市場の環境も完全にアゲンストであった
業績を上げるためまた企業再生するために私は銀行の借入金に代わる資金調達・返済スキームを考案した この手法はファイナンスの世界では画期的で、今まで誰も実行したことが無く、バナーズがかかえる諸問題を一気に解決できるものと自負していたが、意外にも会社側はそのプランに理解を示さなかった
むしろ彼らは株式を上げるために効果的な投資家を私が連れて来ることのみを期待していたようで、私の周りの賢明な投資家は当然そのようなリスクの高い投資に応じるわけが無く、投資家も私が自ら描いたスキームが採用される保証があって初めて私を応援し前向きに検討するというものであった
したがってそのようないたちごっこが続きながらも、私は合計4人もの投資家を紹介したが、結局バナーズ側、ならびに小林氏はその提案を受け入れず(彼らの何か急ぐスケジュールの都合からか)ある時期をもって私との交渉を打ち切ってきたのであった
したがって私が提案した事業プランならびにファイナンススキームは結局日の目を浴びることなく没となり、私はこの作業にかかわった数ヶ月は私自身結局なんの報酬も得ることなく徒労に終わり、公式に相談役就任予定を退くこととなった
その間、起きたことは私の相談役就任リリースとほとんど同時期に図ったように仕組まれたバナーズの恐喝事件の逮捕劇、後日私は市場の関係者から松本が仕掛けたのといろいろ尋ねられるが私にとっても実際寝耳に水のような話であり、いささかその影響力には困ってしまったものなのであった
また私は社長はじめ正式に会社側との接触を求めたが、小林氏側の抵抗によって一度もそのような機会すら与えられることなく終わったのである
このような事を後から冷静になって振り返れば、私は窮地に追い込まれた彼らの広告塔として利用され、彼らの予定通り株価を吊り上げるだけの投資家を私から期待出来ないと見るやいなや(おそらく他にそのような投資家が見つかったのであろう)理想に燃えている松本はかえって邪魔なので退いてくれということでこのようになったのであろうと推測される
5 挫折と展望
私が相談役を降りた直後、またもや数字のまやかしともいえる準備金の取り崩しによる見せ掛けのバランスシートの改善策(従来仕手筋が駆使してきたまやかしの常套手段)が行われており、それをみて私は計り知れない悲しさと寂しさに苛まれるようになった
今思えば事業家でもない一株主によって支配され、彼に都合のよい経営などしたことの無い傀儡のスタッフが送りこまれたそんなボロ会社を、理想に燃えてまともに再生しようと考えていた私の方が間違っていたのかもしれない
しかし、私は言いたい
上場会社はそれが上場という公的な場にある以上、一部の誰かの利害を代表するものであっては決してならない
そして会社の社員もその大多数を代表する株主も、その会社が社会に対し、広く認められ必要とされるべき存在にしなくてはならないことを深く認識しそうなるように実行すべきなのである
私の実務家としての長い経験上、いつもそのような意識や知識をもたない社会人と出くわし、自分の力ではどうしようにもならないこれらの現実にいつも落胆するのである
だからこそ私はジャーナリストとして、実務との利害関係を超えてでも、このような不条理に対して声を大にして正論を言い続けようと思うのである
バナーズのこの一件をさらすことは私にとっても決して愉快なことではない
しかし昨今当局が積極的にここ数年の証券業界の不始末を一掃し糾弾しようとしているのであるならば、私も声を上げて支持しなければなるまい
次回からは先日逮捕されたオメガプロジェクト元社長の横浜氏周辺の事件と、このバナーズとの奇妙なつながりについて解説して行こうと思うのである
6 仕手の遺言
最初に、今から述べる2007年当時の出来事は、私が病気が原因で業界の第一線を引いていた時期の事でもあり、今までの私の著作のような直接の実体験に基づいたものではない
しかしながら、これらは私がバナーズの相談役になるに際して小林氏から直接聞いたことや、またその後その周辺の信頼すべき関係者数人から聞いた話をもとに構成しているので大筋真実と異なるものではないであろうと認識している
バナーズは2007年10月29日払い込みで第三者払い込み増資5000万株1株34円で17億円の資金調達を行っている 引き受け会社はインベストメントサイゴンでありベトナム投資を行っているという振れ込みの不透明な会社、その代表は今回ユニオンホールディングで横浜氏とともに逮捕されたジェイ投資事業組合の桑名利夫氏とされている
今回恐喝で逮捕された本多氏、前野氏、鈴木氏はそれぞれこのインベストメントサイゴンに資金を貸し付けた神商やワシントンの代理人として資金回収を強要し金を取ったこととが理由で更に警察当局もそれらの資金の裏づけに反社会勢力が関与しているのではないかという理由で動いた形跡もある
私は当初小林氏からは、会社に彼らが乗り込んできて恐喝をし、その時のテープ等の一連の証拠もあると説明をされ、資本市場からそのような行為を追放すべきだという私の主張や善意を巧みに利用し私に同調するように促してきた
そして私の相談役就任予定というリリースとほとんど同時期にこの逮捕劇が報じられ世間的にはあたかも私が手を貸し逮捕劇が進行したかのような思惑をも市場に与える結果となったのであった
私にとってはそれはいささか迷惑な話で、私の周辺の仲間も心配して私にいくつかの情報を与えてくれたのであった
しかしその後の詳しい経緯を私が知るにあたって実はこの問題はそれほど単純な事ではないということを気づき始めるのである
今思えば以前なぜこのようなトラブルが起きたのかという質問をバナーズ関係者に尋ねたところ、私は意外な事実を耳にするのである
彼らは投資家はこのファイナンスによって利益を得ようとした そして当時横浜氏を中心の旗振りとして株価のつり上げを図ろうとしたのであると しかし私は不思議に思った 横浜氏はオメガやユニオンの会社経営者であっても仕手筋というイメージはない 彼らにそんな力や野望があったのであろうかと
しかしバナーズ側は彼らが巧妙にファイナンスを仕組み、株価の演出を横浜氏中心でしたのだと私には力説し続けたのである
後に私の友人のジャーナリストや、この出来事を詳しく知る関係者が私に忠告してきたことは
「松本、真実は全く逆だよ 小林氏が彼らに元本を保証して金を出させたんだ 34円の株を数ヵ月後に40円で返すという約束でさ」
「それは投資ではないということですか」
「そう あれは単なる金銭消費貸借契約(金消)で小林氏と神商やワシントンとの間には契約書も存在しているらしいよ」と
私はそのことを知らされてからこのバナーズ側の言い分にはとてつもない不信感を持たずにいられなくなった
私は恐喝や脅しという行為は絶対にこの日本の資本市場から追放すべきだという信念にはかわりは無い
そして公正な株式市場を作り上げることは私の永遠の持論であり私の活動ではあることもかわりがない
しかしこのトラブル・事件は、我々が聖域としている資本市場にまたひとつ不当な影を落としこんでいるのである
投資資金を有しない架空の引き受け先、投資ではなく金消でまかれた投資契約、マネーゲームのためだけの資金調達とそれにむらがるボロ株会社の株主と経営者、それぞれの一連の出来事に今の全ての資本市場が抱えている問題点が浮き彫りに映し出されているのである
私がその事実を認識し始めた頃、それを見透かしたかのようにバナーズ側ももう私には用が無いとでも言うばかりな態度に露骨に出てきた
時は2009年春、私は自分の懇意にしている投資家からバナーズへの投資の同意が得られないまま、またバナーズ側からも私からの事業再生提案が全く相手にされないまま暗黙の了解の下で相談役の就任を降りることとなる
そしてそこに最後残ったのは、またもや私の前向きな情熱が裏切られた末の徒労と、人の信念をまたしても悪用し利用しようとするこの業界の輩たちにたいする嘆きもしくは不振感そのものだけであったのである
7 問題の所在
おそらく2007年あの当時は西田氏が現場の一線から去り相場の演出家が不在の中、故高橋治則氏の側近でもあり後継者でもあった横浜氏が何人かの投機家達からの絶大なる信頼を受けて仕手筋の代行をしていたのではないかと想像される
いつの時代も投資家には市場を演出するヒーローを嘱望する しかしマーケットのルールが不正だらけで秩序や倫理が乱れている環境では、そこに大きな不正や犯罪が生まれやすくなるのは当然なのである
その当時はライブドアの堀江なる勘違い野郎が市場を席巻し、投資家たちもその戦略家たちの口車に乗せられ積極的に投資してきた時代である
投資ファンド、カリスマ経営者という言葉に笑いが止まらないくらいに金が集まり一部ファンドを使っては投機的なマネーバブルが起きていた時代でもあった
今、当局が押さえている案件はみなその当時のものである 共通していることは主人公がみな上場会社の経営者で会社を牛耳る立場にいるものであること、不適切な資金調達を容易に行える立場にいたということなどである
堀江が世間を騒がせていた頃、東リホールディングの福村氏もジェイブリッジもそしてユニオン横浜氏もみな一世を風靡していた 市場は彼らの演出に踊らされ何もしらない個人投資家は多大な損害をそれらから受けることとなった
彼らが犯した罪、それは上場会社経営者という公人としての責任、あくまで一般株主から会社の経営を委託されその責任を全うしなければいけないはずの立場である経営者が自らその義務を放棄し仕手筋そのもののようなマネーゲームに興じる姿こそが、資本市場に対する冒涜であり多くの投資家への裏切り行為なのであるということなのである
私が聞いた話は大阪の髙木証券ではバナーズのファイナンスの情報が事前に漏れて何人かの投資家はその策略で踊らされたという
そして34円の増資の発表後、株価を吊り上げる工作を持ちかけられ多くの被害者が出たという
私が聞いたのはこの証券会社の営業マンは横浜氏との繋がりがある人物とされており、小林氏の証言からも横浜氏が自分の手の内であるユニオンのファイナンスを利用してバナーズの株の吊り上げ演出をしている可能性は十分推測できるということである
私は思う 自分が自由に金を調達し運用する力を、公人としての上場会社経営者が持ち始めたら、市場の秩序をこの上なく乱れるであろう
上場会社は不特定多数の株主のもの 大株主はあくまでその代表者でしか過ぎない
その彼らが会社を牛耳り会社の金を流用し私物化することは絶対に許されてはいけないことなのである
それは言い換えればバナーズの大株主小林氏にも言える 大株主の立場を利用して会社を牛耳り経営を思うように支配するこういは横浜氏らとなんら代わらない 問題は彼らが私利私欲で行動するのではなく会社の代表として会社を立派に再生させる苦労や努力を怠っていることなのである 彼らは自らの過ちを反省することは無くむしろ強権的に他人のせいにして立ち去る
今の未熟な新興市場ではそのようなことをはっきりと認識している経営者がいかに少ないことか 今回の当局の捜査、資本市場を食い尽くすハイエナ狩りは、徹底的にそれらの根底にある問題を総括し改善して欲しいものである
そして一日も早く多くの個人株主たちに信頼される市場、公正なルールの下に運用される市場の実現を目指して組み直して欲しいものなのである
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